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マレーシアの政府系投資会社1MDB関連の口座、シンガポール当局が凍結

 マレーシアでは政府系投資会社を舞台にした汚職疑惑で激震が走っている。ナジブ・ラザク首相の肝いりで2009年に設立されたマレーシア政府100%出資の国有投資会社「1マレーシア・デベロップメント(1MDB)」は、設立から6年足らずで420億リンギ(約1兆4000億円)にも上る巨額の借金を抱えていることが発覚。所有資産は、520億リンギ(約1兆7200億円)と公表するが、その大部分が不動産で、キャッシュフロー収益がほとんどなく、これまで国内の主要銀行や海外の投資ファンド、投資家などから融資を受ける形で原資を肥やしてきた。所有しているのが国家で、強力な後ろ盾を持っていたので、あまりにもたやすく自由に使える資金を手に入れることができた。その結果、汚職の疑惑のあるリターンに問題のある投資を次々と決めていった。

 その結果、1MDBは、国有投資会社としては最悪の部類のスキャンダルを生み出した。ナジブ首相本人は強く否定しているものの、首相が関与する汚職が疑われ、政治危機をもたらして通貨リンギが急落する一因となった。同社からマレーシアのナジブ首相に、26億リンギ(約751億円)に上る不正な資金が流れた疑いが浮上。その一方で、マレーシアの法務長官府は1月、同案件に犯罪性はないとして捜査を終了させていた。
 
 マレーシアを超えて、この影響は東南アジア圏において極めて大きく、日本で報道されている以上に、現地では強い衝撃が起こっている。2月2日付の現地紙の報道では、シンガポール警察の商事調査局(CAD)と、中央銀行などに当たるシンガポール金融管理庁(MAS)は1日、マレーシアの政府系投資会社ワン・マレーシア・デベロップメント(1MDB)に関連する多数のシンガポール国内口座を、マネーロンダリング(資金洗浄)など違法行為の疑いで凍結したことを明らかにした。凍結口座数は明らかにしていない。

CADとMASは違法行為の疑いのある口座について、2015年の中頃から調査を始めていたと説明。「シンガポールの金融システムを利用した不正資金の運用行為には、一切の容赦をしない」とし、強い姿勢で調査に臨むことを強調した。

またスイスの検察当局がこのほど、1MDBに関係する複数の企業から約40億米ドル(約4,825億円)が不正に流用された疑いがあるとして、マレーシア政府に捜査協力を依頼したことを明らかにしていた。スイスに関連口座があることなどから、昨年8月から捜査を続けていたという。

 こうした一連の出来事により、マレーシアにおける不透明性が国際社会に大きく喧伝されることになってしまった。急落したリンギット以上に、マレーシアの評判を今後引き上げていくことは困難が伴うことが予想される。