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ベトナムのファストフード業界から見る飲食の成長市場とは

 NNAによると、ベトナムでは近年ファストフード市場が年率10%成長しているという。市場が飽和するベトナム周辺国と比較して、相対的に伸びしろが大きいため、各国主要会社が積極的な店舗網の拡大に注力している。

 ベトナム・ニュース(VNS)によると、ファストフードは東南アジア諸国連合(ASEAN)主要国で普及が進んでおり、ケンタッキーフライドチキン(KFC)とマクドナルドの存在感が大きい点も、ほぼ共通しているという。特に、KFCはチキンがイスラム圏でも、仏教圏でも受けられやすいことから、比較的安価な価格でどこの国でも広範囲な展開を行っている。

 世界的なファストフードチェーン各社が、ベトナムでの事業拡大を目指している。タイやフィリピン、マレーシアといった市場が飽和状態に近づきつつある一方、ベトナム市場は年間10%の拡大が見込まれており、伸びしろが大きい。すでに大きな市場シェアを持つフィリピンのジョリビーなどが店舗網の拡大に注力しているほか、後発の米マクドナルドも追い上げに力を入れる。

 ファストフードが成長するためには、ある程度の国民所得の高まりが必要だ。マレーシアやタイ等周辺国と比較して、一人当たりGDP水準の低いベトナムでは、現状のファストフード利用率は、ASEAN主要国の中では最も低い水準にある。ただ、若年人口の多さや、中間所得層が増えていることから、大手各社は中長期的な有望市場と見ているという。

 英調査会社ユーロモニターのデータでは、個人経営の店舗なども合わせたベトナムの2014年のファストフード市場は15兆4,350億ドン(6億8,600万米ドル、約827億円)で、前年比で16%拡大した。09年の6兆5,294億ドンからは2倍以上の市場規模になっている。

 このうち、最大のカテゴリーはアジア系の料理(4兆2,814億ドン)やハンバーガー(4兆2,253億ドン)、アイスクリーム(4兆1,873億ドン)、フライドチキン(2兆2,550億ドン)となる。アジア系の料理とアイスクリームは、売上高の9割以上を個人経営の独立系業者が占める。反対に、ハンバーガーとフライドチキンの大半は、チェーン店による売上だ。チェーン店が急速に伸びていることを受け、ハンバーガーとフライドチキンの市場は09年比でそれぞれ5.2倍、2.8倍と大きく拡大している。

 金額ベースでシェアトップはロッテグループの「ロッテリア」で43.8%。2位はKFCで30.4%となり、これに「ジョリビー」が11.7%、「バーガーキング」が4.0%で続く。

 ジョリビーの14年の売上高は83%増と、大手企業の中では最も業績を伸ばした。店舗数は15年11月時点で69店となっている。同社の戦略の特徴は、郊外など2級都市への出店に重点を置いていること。他のチェーンよりも価格競争力で勝っていることが、都心部以外で利用者を拡大することに貢献しているという。フランチャイズ(FC)による展開も進めており、出店の拡大に一層注力する方針を示している。

 マクドナルドは参入が14年と遅く、シェアは1.8%。ただ、1号店のオープンから半年で2店舗を新たに立ち上げたほか、10年間で最低100カ所に店舗を構える方針を示している。ベトナムで24時間営業を開始したのも、業界では同社が初めてとなる。

 また、ダンキンドーナツが13年、デイリー・クイーンは14年に1号店を立ち上げるなど、ここ数年で世界的な大手企業のベトナム参入が続いた。ユーロモニターは「大手企業の参入が続いているのは、ベトナムのファストフード業界の投資環境が魅力的である証拠」と説明している。

 売上高のうち、83%は店内での飲食によるもの。ただ、この割合は縮小傾向にあり、持ち帰りが増加傾向にある。各社は配達サービスを拡充し、オンラインでの注文受付にも力を入れる。外部の業者にシステムの開発や提供を依頼するケースも増えているという。

 ベトナムのファストフード市場は、19年まで10%の年間成長率(CAGR)を記録する見通しで、25兆261億ドンに達する見通し。順調な市場の拡大が見込まれる中、リスクになる可能性があるのは消費者の意識の変化だ。ユーロモニターは「健康に対する意識が高まり、ファストフードを取りすぎることに対する不安が広がる可能性がある」と指摘している。

 こうした競争が激化していく中で、各フランチャイズともどれだけ自社のポジショニングを明確に市場で確立できるか、オペレーションをしっかりと強化できるか、優良な立地を確保できるか、現地に合わせた商品開発が出来るか等が問われてくる。